黒田書房

不定期で小説を投稿していきます。少しでも楽しんでもらえれば何よりです。

思い出百景ー6

 僕が亮子に告白してから数日が経った。香介には、僕が振られたことは話している。振られたと、それだけしか話していない。亮子も香介のことが好きだとか、そういうことまでは話してはいけないと思った。僕の口から伝えることじゃない。というのは建前で、よりにもよって僕が香介にそんなことを言ってしまったら、僕はどんな気持でいればいいか分からなくなってしまいそうだったから。

 卒業もそう遠くないこの時期だし、僕が告白したからということもあってか、亮子が香介に告白するのは案外早かった。

「俺さ、亮子と付き合うことになったんだ」

 僕がその話を知ったのは、嬉しそうに、だけどどこか申し訳なさそうにしている香介から、直接聞いたから。

 よかったじゃないか。僕はそう答えるのが精一杯で、口ではなんと言おうと、実際には誤魔化せていないようで、香介が報告以上のことを僕に話さないようにしてくれていた。その気遣いが僕にとっては辛く、僕を苛立つかせていく。八つ当たりだっていうのは重々承知だ。それでも僕は、僕の気持ちを誤魔化しきれずにいた。

 二人は付き合いだした。でも、僕たち三人としての関係は変わらない。初めはみんなそう思っていた。学校に三人で行ったり、勉強の息抜きで遊んだり。むしろ、二人が付き合いだす前よりも、三人で集まることが増えた気がする。

 そんな日々が、僕を少しずつ、でも確実に良くない感情で満たしていく。

 不安定な関係のまま、僕たちは卒業式を迎えた。